わたしの前で立ち止まる母子
子供は5歳くらいの女の子
左手に、あめ玉のたくさん入った袋のくちを握りしめている。
母親は、30代くらいだろうか
まだ潤いをおびた肌が、若さを伝える。
「うさちゃんに、あめあげるの!」
「うさちゃんは、あめが欲しいなんて、思ってないよ」
「やだ!うさちゃんにあめ、あげていくの!」
女の子は、半分泣きべそをかいている。
母親はしばらく困ったような顔をして、女の子を見つめた。
「一つだけなら、いいわよ」
母親がそういうと、女の子はパァっと嬉しそうな顔をして
あめ玉の入った袋の中に手を入れた。
左右の眉を寄せて真剣な顔つきで
「うさちゃんはねぇ、くさがすきだから、みどりのあめにするの!」
と言った。
女の子はわたしの前にわたしが決して舐めることのできないあめ玉を置いた。
嬉しそうに去っていく女の子
母親はチラリとわたしの方を振り返り、少しすまなそうな顔をして
また女の子の方へ顔を向けた。
わたしは女の子の手に握られて、ほんの少しあたたかくなったあめ玉を
焦点の合わない瞳で、見つめた。
(散歩中に見つけた兎の像の口もとに、飴が置かれていました。おそらく子供の仕業かなと、飴を置く母子の姿が浮かんで・・・
ついつい創作文でした。)
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