このボローニャ展のレポートを綴り続けて、4回目
ついにラスト
レポートその4、スタートです。
レポートその1~3はこちらからどうぞ
「夏のアトリエ」
2日目
3日目
4日目
5日目
のスケジュールはほぼほぼ制作時間。
その間もディエゴ先生が各作業机を回りながら質問を受け付けてくれました。
最終日の15時から作成した作品の講評
では、今回は私がこの「夏のアトリエ」で制作したものを公開していきます。
まずはすスケッチブック
近所をウロウロして作ってみました。
普段なら何も思わず通り過ぎてしまう場所も、意識した途端に景色が変わります。
ディエゴ先生が言っていた通り、動いている人物を描くのは至難の技
目の前を5秒で通り過ぎる人を描くって、そうとう訓練が必要だなと実感したところで、
もう「夏のアトリエ」まで1週間をきっていたので、あきらめてメディアに撮影した画像を見て描きました。
でもたぶん、この能率を重んじる行為によって、見えなくなっていることが私にはたくさんあるのだと気がつかされました。
それは、「夏のアトリエ」で作成した5枚の絵にも反映されたのです。
「夏のアトリエ」では生徒がそれぞれストーリー(関連性のある)5枚の絵を作ります。
今回スケッチしてきたものは、その5枚の絵を作るのためのアイデアになるわけです。
この「夏のアトリエ」では、ディエゴ先生との面接の時間も用意されていて、一人15分くらい、それぞれが自分で作成してきたポートフェリオを見てもらい、質問などができる時間として割り当ててくれました。
でもこの面接、みんなに丸聞こえ。
今回はディエゴ先生が編集の仕事もされているので、気に入った方には声をかけられていたました。
残念ながら私は何も言われず、準備不足の自分が悪いのは承知していながらも、結構露骨に反応が違うのを目の当たりしてしまうと、へこむ。
私だけなら、この時点でめげていたかもしれないのですが、同じように悔しい思いをした方が少なからずいて、それでも前向きに制作されている姿をみて、拗ねている場合じゃないと私も作品に集中して制作を頑張りました。
けど
本音を言うと
私はディエゴ先生に対して4日目あたりから心を鎖国しつつありました(笑)
私の心の許容範囲の狭さに笑っていただけると幸いです。
そんな中、4日目くらいに同じように悔しい思いをしているはずの生徒さんが、最終日にディエゴ先生に何かプレゼントしたいですね、と私に言ってきました。
ディエゴ先生に対して、鎖国中の私の心でしたが、その人の思いやりの気持ちに頭を叩かれました。
その場で「そうですね」と、その言葉を流すのは簡単だったのですが
「後悔」という言葉が脳裏をよぎりました。
ディエゴ先生が日本の反対側から来てくれて感謝がどうの、というよりも
できる努力があったのに、やらなかったことへの後悔が残ってしまう。
それだけは嫌でした。
まずは自分に何ができるかを考え、鎖国中であっても和国の同盟を結ぶことなら協力できる、と結論を出しました。
だから、思い切って全員に声をかけて、ディエゴ先生に気付かれないように「夏のアトリエ」参加者全員で、メッセージカードとプレゼントを用意しないかと持ち掛けました。
誰かが言い出すのを待っていてくれたようで、全員快く賛成してくれて
このプレゼントにディエゴ先生もとても喜ばれていて、最終日に渡すことが出来ました。
なにげに、このプレゼントを数人で作成しているときが一番楽しかったです。
さて5枚の絵についてですが
5日間といっても実質作品に関われる時間は3日半くらい
その中で5枚の絵を完成させ、最終日に全員の前で講評
という流れなのだと思っていました。
それがまさか
講評してもらえたのは8人だけ
その8名は、ディエゴ先生の意図を汲み取った作品を制作されていた方たちでした。
ここでも現実は厳しかった。
私はずっとこう思って作品を仕上げていました。
「期間内に仕上げなきゃ」
でも、ディエゴ先生の意図していたことは、前回のレポート3にもある通り
「物語を作成する過程を大事にする」
というものでした。
だから完成を目指さなくていいと、何度も言っていてくれていたのに
私はとにかく「5枚仕上げなきゃ」
ということにこだわり続けてしまいました。
だから、迷うようなストーリー展開は、初日で捨ててました。
1から10まで、結局私は表面上でディエゴ先生の話を聞いていただけ。
最後に選ばれた方たちの講評は
見事に先生の意図を理解して、悩んで迷って制作した作品たちでした。
中には、ミニブックの中でストーリを練り上げていただけの方もいて、
私がいかに結論を急ぎ過ぎているのかがよーーーーく分かりました。
そして、それが絵本制作が出来なくなった原因だったことが判明して
この「夏のアトリエ」に参加したことへの意義が、深く突き刺さりました。
そして、ディエゴ先生の言っていた、この職業(絵本作家)に携わっているものたちにとって、なにより一番大事なこと
それは
「楽しむ」こと
「遊ぶ」こと
「迷う」こと
そして
「失敗する」こと
「夏のアトリエ」期間中
私はそれらをまったく理解していませんでした。
そして普段どれだけ、自分の思想にがんじがらめにされていたかが分かりました。
そんな中、できた作品はこちらです。
「どじょうの石像」が水の中を目指して小さい人たちと奮闘するお話。
スケッチしたものの中からお話を作成しました。
他の生徒さんたちの作品は、ディエゴ先生がFacebooに投稿してくれた写真があるので、リンクを貼っておきますね。
ディエゴ先生のFacebookはこちら→ 「Diego Biankiさんの投稿写真2019/7/27」
最後に、サインの話。
今回、ディエゴ先生は著作の絵本を購入された方に、サインを書いてくれていました。
夏のアトリエ3日目くらいに私も1冊購入することが出来て
4日目に勇気を出してサインを頼むと、「今は忙しいので、明日」という回答
5日目には同じような方が何人かいて、預かってもらうことに
ただ、この日もやはりとても忙しかったようで、サインはもらえず本だけ返却されました。
板橋美術館の副館長、松岡さんが気を使ってくれて、「明日の講演会の後でサインの時間があるから、そのときにまた持ってきて」と言ってくれました。
そのときには、正直サインなんてどうでもいいと思うくらい、あれやこれやで心がグレまくっていたのですが、翌日の講演会前、また「後悔」という言葉が脳裏をよぎりました。
「このまま本を持っていかずにいたら、ディエゴ先生に対して私の心は鎖国したままになってしまう」
「だめだ、だめだ、私の心よ!開国せい!」
と、脳が指令を出してくれて、かばんの中に本をしまって板橋区立美術館で行われたディエゴ先生の講演へ向かいました。
ここでもまたもや松岡さんが気付いてくれて、会場にいた私をみて本を預かってくれました。
ところが
講演会直前で、松岡さんが「忙しいから、サイン無理だったわ。ごめんなさいね。講演会後のサイン会で並んで」と言って私に本を返してきました。
「どんだけだよ!」と心の中で突っ込みつつも
松岡さんに優しくされてちょっと嬉しくなったところで講演会スタート
その様子はこちら→「ディエゴ・ビアンキさん講演会」板橋区立美術館
終了後、サインの列に並ぶか迷っていたら、なんと「夏のアトリエ」で一緒に学んできた生徒さんが1番初めに並ばれていました。
つらいのは、私だけではなかったのと、みんなの諦めない気持ちにまたもやハンマーで頭を殴られたようでした。
私もすぐに2番目に並びました。
そしてついに書いてもらえたサイン。
2重、3重の重みがあります。
これはD&A和親条約締結のサインです。
※D=ディエゴ、A=青木
その後、講評してもらえなかった方の中からも、直接ディエゴ先生に意見を聞きにいく方もいたことを聞いて、この職業でチャンスを掴むために、皆並々ならない努力をしているのだと、実感しました。
甘い、甘い
自分は本当にあまちゃんです。
と、こんな感じで、濃厚豚骨ラーメンのような「夏のアトリエ」は終了しました。
今、ここが海岸であるならば、海に向かって叫びたいです。
「心の、夜明けぜよ!」
おしまい。
コメントをお書きください